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詩『七代後の子供たちとの約束』

最終更新日:2008年1月20日
ネイティブアメリカンは、七代後の子孫のためになるかを考えながら、物事を決めていくという。

私たちは、自分の世代が楽しむことだけを考えて生きてきた。自分以外はどうでもいいと思いながら、無軌道に生きてきたわけではないが、七代後の子供たちの幸せなど考えたこともなかった。

私たちから地球を譲り受けた子孫はどんな顔をするだろう。喜んでこの世界を受け取るだろうか。それとも、こんなプレゼントはいらないと、お礼も言わずにすねてしまうだろうか。

七代後の子供たちとの約束。

彼らが住みよい世界を用意すること。



私たちは今ある世界を親たちから譲り受けた。命も与えてもらった。こんなに荒れてしまった世界を素晴らしい土地に変えられるはずもないだろうなんて、親たちのことを批判するのはおこがましい。

私たちにできること。ただひたすら七代後の子供たちの幸せを願って、世界を安住の地に変えていくこと。



子供を産みたくない人が増えている。子供を産みたくても産めない人もいる。子供を育てるのが面倒だと考える夫婦もいる。子供が産まれた時はあれだけ幸福感に包まれたのに、いつのまにか子供を虐待している親もいる。

産むのか産まないのか。一人の赤ちゃんを産むということは、七代後まで続く子孫の幸せを願ったということでもある。

子供たちとの約束を誓う私は、まだ結婚していないし、恋の相手もいない。順序が逆だろうか。

私は何より先にまず、子供たちの幸せを願う。自分の子供だけでなく、この時代に生きる子供たち全ての幸せを等しく願う。

姉が産んだ子供は可愛らしい。街で見かける子供もまた可愛らしい。子供たちを愛する親の姿を見ていると、気持ちが安らいでくる。

この当たり前の気持ちを連綿とつなげていくこと。世界は子供たちの幸せを願う思いでつながっている。

私たちの子供たちが、誰かを愛して、赤ちゃんを産む日がやって来る。これは何十年何百年と繰り返される生の営みだ。

私たちの七代前の世代というと江戸時代だろうか、戦国時代だろうか、鎌倉時代だろうか。

私たちの先祖は、世界がこうなるとは想像もしなかっただろう。けれど、確かに私たちは、先祖からこの世界を譲り受けた。この世界を下の世代に伝えていこう。



新聞には毎日不穏なニュースが載っている。平和が続く国では親と子が殺し合っている。戦争が続く国では、民間人が爆撃の犠牲にあっている。

七代後の世界でも、人間は殺し合いを続けているのだろうか。私たちの子孫は、他殺も自殺もない心安らぐ社会に暮らしているだろうか。

そもそも、未来に人が住む社会はあるのだろうか。大地からは水がなくなり、砂漠が広がっている。動物たちの間には死の病が蔓延している。さらには全てを滅ぼす爆弾が世界中に保管されている。

今を生きる私たちの選択が、七代後の子供たちにどういう影響を及ぼすか、考えながら生きていくこと。たとえ今どんな地点にいても、いつでも道を引き返すことができる。子供たちは愛の挨拶を待っている。

私たちの子供たちは海を越えて、異国の人々とつながってもいくだろう。いつか憎しみ合う世界が一つになる日がやってくるだろう。

和解の約束。七代後の子供たちのために。


(2007年作)
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