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小説『仮眠の後で愛撫された物語』

最終更新日:2008年11月9日
 僕は君の顔を愛撫した。僕は君の頬を愛してやまなかった。

 君の肉体と僕の肉体が、太陽の真下で輝く。世界中の人々が僕らの体を羨望の眼差しで見つめている。

 僕らは世界中の人々を愛撫した。彼らの体中を舐め回す僕ら。

 彼らが僕らの隅々を愛撫してくれる。僕らは彼らの指と舌の動きに、僕らのページを委ねる。

 おお、僕と君。僕らは彼らに陵辱される。僕らは歓喜する。

 おお、彼らが僕らを舐め回す。

 

 君の体が僕の目の前に運ばれてくる。君の体は鉄のように硬い。僕が指を触れると、君の体は溶け始める。

 僕らは野生化する。僕らは獰猛に肉に食らいつく。僕らは見つめる。僕らは生きる。僕らはでかい。僕らは世界からはみ出る。僕らの目玉がランランと輝く。僕の口が文句をまくしたてる。勢いに乗って言葉が飛翔すると、君たちはびっくりして僕らに飛びついてくる。君たちの足はでかい。僕らの足は細い。

 

 非常識な世界が回転すると、君の死体が溢れ始める。僕らは君の死体をも崇める。僕らは全ての失敗を成功に反転させる。僕らは君の死を凝視する。僕らは君を詩に変えてしまう。永遠の存在になる君。

 僕らは何もかもを食べてしまう。僕らに好き嫌いはない。僕らはあらゆる夢を愛撫する。僕らは肉体を見つける度に裸になる。僕らは君たちを食べてしまう。君の体が料理になる。

 僕は君を倒した。僕は君に勝利した。

 僕らは君を圧倒した。君は僕らを睨んだ。君は僕らに嫉妬した。僕らは君を、身動きできなくなるまで叩きのめした。君は声をあげて倒れた。君の顔はひどく怯えていた。僕らは君を取り囲んだ。君はもう逃げられなくなった。

 君は気づいた、椅子の奥に座っている一人の男に。その男が君の前に進み出てきた。君の前に男の手が差し伸べられた。

 

 僕らが歩くと、君たちがひざまずく。僕らは王だ。僕らは君たちを殴打する。君が泣く。僕が笑う。君が泣き叫ぶ。僕も一緒に泣き叫ぶ。僕は感じる、君の宿命、君の浅知恵。

 

 僕らは君たちをこづきまわす。君は叫ぶ。僕も叫ぶ。君が泣き叫ぶ。君の顔が心底怯えた表情を示す。僕らは最後の最後まで君を追い詰める。そこで僕らは君を開放する。君は自分の無傷に気づく。僕らは君を懺悔に導く。

 僕らは東京を走り回った。僕らは道路標識をなぎ倒した。僕らは歩いている人々に体当たりした。彼らの体が露と消えた。僕らの車は血だらけになった。僕らは車の中でみんな泣き叫んでいた。突然僕らは一斉に笑い出した。7日間僕らは笑いとおした。

 僕らは刑務所に入った。僕らは刑務所内で泣き続けた。僕らは開放された。僕らはまた罪を犯した。僕らはまた刑務所に入った。僕らはまた泣き続けた。その後、7日間笑い続けた。僕らは別の場所に連れていかれることになった。

 たとえつかまったとしても無茶をし続けること。僕らの流儀をつらぬくこと。すると、僕らは開放される。

 僕らの社会の窓は開きっぱなしだ。僕らは踊り続ける。僕らは成功を性交とみなす。精巧なる成功の芸術。

 僕らは最後まで踊り続けた。僕らに怖いものはなかった。僕らは僕らの力を疑うことなく、何者をも恐れずに踊り続けたのだ。夜通し踊っても3時間も眠ってしまえば、僕らはまた昼間から踊り続けた。

 

 おお、君の体。君の体は柔らかく、硬い。君の柔らかい体が激しく硬直するとき、僕らは絶頂を迎える。

 僕らはまた外に飛び出した。僕らは高速道路を走り続けた。子どもが道路の脇で泣いていた。

 僕らは車をとめて、子どもを睨みつけた。子どもは泣くのをやめなかった。

 僕らは子どもに微笑みかけた。子どもは泣くのをやめて悪ガキになった。

 僕らの車に子どもが乗った。僕らは子どもと一緒になって、高速道路を逆方向に進んだ。

 僕の穴に君たちが入りこんでくる。大きな、とても大きな君たち。僕は君たちに笑いかける。君たちはとても怯えた顔をしている。

 僕が君の心配、不安を取り除いてやる。安心しろ、大丈夫だ、僕の傍にいれば怖くないよ、僕は笑いながら君たちに向かってそう囁く。君たちは僕の言葉を信じられず、不安を覚え、ためらい続ける。

 僕は君をつく。激しくつく。つき続けるのだ。君が壊れるまで、僕は君たちをつき続ける。君たちはへとへとになる。僕と君たちは汗だくになってその場に倒れこむ。君の顔から不安が消えている。君の顔は疲労からくる喜びで充たされている。僕らはトランスしている。

 僕はお金では大切なものは何も買えないと知っている。お金をいくら持っていても、何も変わらないと知っている。それでも僕はお金を愛し、君たち全員を愛している。

 愛からお金が生じている。僕は君たちを突き飛ばし、お金の渦に君たちを落としこむ。君たちは札束の中で窒息しそうになる。苦しみに恍惚としている君たちを眺めて、僕は微笑む。君たちの苦しみを取り除いてやるように、僕は札束を一つづつ、君たちの周りから抜き取っていく。僕たちが世界をまわしている。君たちは世界にまわされている。

 僕は踊りに踊って、もうへとへとだ。僕はそれでも踊り続ける。僕は何回踊っても、踊りに飽きることがない。僕は泣いていた君を笑いの世界に連れ去った。

 僕は何回も君の顔を井戸の底に打ちつける。君の顔に血がにじむ。君は僕に許しを請う。僕はそれでもかまわずに、君を井戸の底に置き去りにする。

 君の体中に湿疹がういてくる。僕は君が絶望の淵に落ちそうになった時になって初めて、君を井戸の底から連れ出すのだ。僕が君の体を暖める。君は生き返る。君の体中にみずみずしさが戻り、君は永遠の命と至福を得る。

 僕は何も恐れない。僕らはまた高速道路を突っ走る。

 僕らは美しく光り輝く。大衆は美しく光り輝く。

 僕はもう日本人じゃないんだ、いや、そもそも自分を日本人だと想いこむこと自体が間違っていたのだ。

 貴方は美しい。貴方はたとえようがなく美しい。貴方は光っている。

 自分で言うよりも、人から言われた方が、美しさの価値は増す。

 君は美しいです。君は光り輝いている。君に理由はない。君は美しすぎる。君の美しさに理由はない。

 私は彼女とセイコウする。私は彼女と成功する。私は彼女と性交する。私は彼女とセイコウした。私は彼女と成功した。私は彼女と性交した。とても気持ちよかった。とてもとても。私はセイコウすることを欲してやまない。私は成功することを欲してやまない。私は性交することを欲してやまない。私は既にセイコウしていた。私は既に成功していた。私は既に性交していた。私はセイコウしたのだった。私は成功したのだった。私は性交したのだった。最も強大なる感情を呼び起こすのはどれか。それは、単純過去である。私はセイコウした。私は成功した。私は性交した。私はセイコウに興奮したのだ。

 単純過去は、述べられた事態が、今起こったばかりのことかのような錯覚を読む者に与える。「私は性交した」と私が書くとき、私はさも現実に性交したかのような錯覚を覚えた。脳は現実に起きたことと、空想の出来事を識別できないのだ。私はセイコウした、私はおおいにセイコウした。私の子どもたちよ、私はおおいにセイコウしたのだ。大性交した。大成功した。おおいなるセイコウの灯火。

 私は車を高速でかっとばした。私は人間を何人もひいた。かわいそうだった。それでも私は何人も人間をひいた。

 オレンジジュースが空から降っている。僕は大きく口を開けて、オレンジジュースを飲み干した。僕の体中がオレンジジュースにつかった。僕は大きく笑った。

 

 

 

 

 ぱらぱらぱら。オレンジジュース。ぱらぱらぱら。ああ。オレンジジュース。僕の大好きなオレンジジュース。僕はオレンジジュースに指をつける。冷たい。

 冷たくておいしいオレンジジュース。僕の大好きなオレンジジュース。

 ドアを開けると、お母さんが立っている。お母さんが立って笑ってる。にこにこと。僕も満偏の笑みを浮かべる。お母さんの笑顔。

 桜の花が散って。力が減る。また食べたい。黄色い花びら。また食べたい。

 瑠璃色の瞳。瑠璃色の力。僕は走り出す。僕は笑い出す。君に向かって僕はかける。

 ゆるいゆるい。ゆるい足取り。僕の周りでお父さんとお母さんが笑ってる。僕の亡骸。僕は生きる僕の亡骸を見つめ、微笑む。僕のお父さんとお母さんが笑っている。

 夢、夢、夢。黄色い夢。僕の周りの黄色い夢。

 いろいろな酒場。いろいろな。本当にいろいろな酒場。

 たくさんの足取り。子どもたちの。女の子たちのたくさんの足取り。もつれ、もつれて。僕も一緒に歩いていく。墓場に向かって。僕の周りでお父さんとお母さんが回転している。

 正義の味方がいっぱい。正義の味方がいっぱい僕の周りで回転している。正義の味方がいっぱい。

 僕は笑ってる。僕の隣でお姉さんが笑ってる。僕のお姉さん。僕のお姉さんは夢を診ている。お姉さんは僕の夢を診てくれる。お姉さんが僕の夢を診ながら微笑んでいる。

僕の目の前で、お姉さんが口を開く。お姉さんが僕に向かって何か言う。お姉さんが微笑む。お姉さんが僕に向かって何か呟く。お姉さんがまた笑う。

 僕は車に乗っている。僕のお父さんが車を運転している。車は進む。僕は看板を次から次に読み取る。僕は字を読むだけで楽しい。僕は生きていて楽しい。僕には夢がいっぱいある。僕は車に乗って走っている。僕は看板を愛している。

 お姉さんの手は白い。僕のお姉さんの手は白い。お姉さんは長いスカートをはいている。お姉さんは時々ピアノを弾く。僕もピアノを弾きたい。ピアノは難しい。

 いや、ピアノは簡単だよ。

 

 僕は幼稚園でピアニカを弾いている。幼稚園の先生がいる。僕はピアニカを弾いている。お姉さんみたいにして。

 僕はずっと笑っている。僕はお父さんとお母さんと一緒にテレビを見ている。テレビはいつも面白い番組を流している。でも、ニュースはあまり面白くない。何を言っているのかよくわからない。お父さんはニュースをよく見る。僕は面白い番組が好きだ。僕は笑ってテレビを見ている。

 僕はどきどきしている。僕は毎日どきどきしている。僕は川原をどきどきしながら駆ける。僕は雑草の上に寝そべる。

 僕の周りの世界は子どもの頃に戻ったんだ。

 僕の周りでお父さんとお母さんが笑っている。僕は部屋を走り回っている。僕はテレビの上によじ上る。僕は天井を見つめる。天井に触れる。天井はお父さんのタバコで変色している。僕はテレビから下りる。

 何のために小説はあるの?お姉さんが僕に質問する。うまい文章、美しい文章を書くために小説はあるんじゃなくて、気持ちよくなるために小説はあるんだ。

 健やかで晴れやかでおっとりとした気持ちになるために小説はある。僕は小説を眺めて、おっとり落ち着いて、微笑む。僕はくるくると頁をめくって、微笑む。

 

 何でだろう?何でなんだろう?いい小説、面白い小説、ためになる小説を書こうとして、僕はとっても苦しんだ。苦しみながら文章を書いた。全然思いどおりに頁が進まなかった。普通の仕事と変わらないよ。苦痛でしかなかったんだ。でもね、くるくるくると子どもみたいな気持ちで書くと、小説がすらすらすらとできていってしまう。こっちが意図しなくても、すらすらすら、あれよあれよというまに小説が進んでいく。どういうことこれ。仕事が進む、はかどる。仕事が楽しい?小説を書くのが楽しい?うんう、違うよ。特別、すんごく楽しいってわけじゃない。なんか普段から子どもの頃みたいに楽しい気持ちで僕は充たされていて、つらいと想うことがないんだ。みんな楽しい。何をするにも楽しい。僕は息をしているのが楽しい。僕は君に見つめられるのが楽しい。君は僕を見つめる。君の目が僕の言葉を必死で追いかける。僕は君の目に答える。

 僕はすっきりふらふら。僕はまっ黄色。僕はふらふら。僕はラッキー。僕はぐんぐんラッキーだよ。僕のラッキーカラーはピンク。僕はピンク。僕の肌の色はピンク。

 きらきらお星様。きらきら。僕に向かって星が降り注ぐ、大きな星、太陽、お月様。

 ぎらぎらぎら。僕の周りに熱がいっぱい。お父さんとお母さんも熱くなっている。

 

 昨日の僕は5歳だった。昨日が5歳。僕はこれからずっと5歳。何故か5歳。

 僕の周りで太陽が回っている、僕は地球。

 お姉さん。お姉さんとキス。純粋なキス。

 

 僕は光。僕は闇。僕は光で闇。僕は人間。

 ゆらゆらゆら、テレビがゆらゆらゆら。テレビの画面がゆらゆらと揺れて、お姉さんが現れる。お姉さんが僕に向かって何か囁く。

 僕は僕の子ども時代と全てがつながった。何をするにつけても、僕は僕の子ども時代の似たような光景を思い出してしまう。二重に重なった全ての行いは、僕を至福で充たしてしまうんだ。

 例えば、コンビニで買ったペットボトルの麦茶を飲む。飲んだ瞬間、昔の家で飲んでいた砂糖いりの麦茶を思い出すんだ。その麦茶はお父さんか、お母さんが作っていた麦茶。

 麦茶が入っている冷蔵庫、麦茶を沸かしているやかん、麦茶が入っている透明な容器のかたち、全部が麦茶を飲むと想い出される。こうやって、僕の現在の全てが、僕の小さい頃と結びついてしまう。何をしても昔の平和だった頃が思い出される。僕の大切な時代。僕が至極大切に扱われていた、愛されていた時代。違う、それは過去じゃないんだ。それは昨日のこと。昨日、僕は5歳だったんだ。

 僕は目をぱちくりさせる。僕の周りでみんなが笑ってる。僕のお父さんとお母さん。僕の周りでみんなが笑っている。

 

 僕は笑っている。僕はもうテレビを批判することなどない。僕はもう日本を批判することなどない。僕は少年。僕は生きている。僕は日本で生きている。

 僕は色とりどりの景色を眺める。僕の生まれた家、生まれた部屋。僕が毎日遊んでいた浴室。

 お姉さんの黒い瞳の色。お姉さんの小さい唇。お姉さんは赤い。お姉さんの体は赤い。

 校門でお姉さんが待っている。お姉さんが待っている。じっと立って僕を待っている。

 お姉さんが舞っている。お姉さんがぐらぐらぐらぐら。お姉さんがいろいろなことをして、遊んでいる。お姉さんが遊んでいる。お姉さんと僕が遊んでいる。

 僕はたまりばに集まる。僕。僕は何人もいる。僕らはお姉さんと一緒に遊ぶ。お姉さんも僕だった。お父さんも僕だった。お母さんも僕だった。世界中の人間が僕だった。地球は僕だった。太陽は僕だった。お月様も僕だった。ナポレオンもクレオパトラもキリストも仏陀も僕だった。世界中の現象は僕だった。

 僕、僕、僕、僕、僕。僕、僕ら、僕、僕ら、僕、僕ら。好きなのはどっち?僕らだ、僕らだよね。

 僕たちと僕ら。どっちが好き?僕ら。僕の周りの僕ら。

 いろんな僕が世界を回している。テレビに映っている人たち、全員僕の分身。みんなが僕。お父さんとお母さんは僕の分身。けどね、僕が生まれる前はね、僕はお父さんとお母さんの分身だったんだよ。

 

 電車に乗っている人たち、全員僕の分身。僕の仲間。僕の友達。僕の大事なひと。僕の恋人。僕の子ども。

 僕のローリングサンダー。僕が手に持つ雷。

 どうしたいの?何を伝えたいの?何をしたいの?わからなかったの?

 

 わからなかったんじゃない、思い出せないだけ。

 僕の周りで黒い時計が回転しているみたい。時間がくるくるまわっている。次のテレビはなんだろう?僕の時代はテレビの時代。テレビと一緒に人生がある。本と一緒にはない。パソコンと一緒にもない。僕の青春はテレビの青春。テレビモニターが僕に笑いかける。僕はテレビに向かって笑う。

 泣くお姉さん。お姉さんの涙を大切にして。お姉さんの涙をかきまぜて、あったかいスープを作ってみて。飲ませてあげて、お姉さんに。

 僕の隣でお姉さんがテレビを見ている。僕はお姉さんに体を預ける。

 音楽番組を見る。音楽番組は20年前と何も変わっていない。同じようなアイドルが出て、同じような歌を歌っているだけ。音楽番組は、僕が5歳の頃の記憶を僕に返してくれる。

 

 僕の色が僕のもとの色に変わった時、僕は僕に返る。

 僕の体が軽くなる。僕の先っぽの小さい色。

 僕の体がお姉さんそのものに変わる。僕は妙に色っぽくなる。僕はどこかしら愛を求めるさびしげな顔つきをしながら、いつも人を見つめるようになる。僕は甘える。

 

 僕の無意識が僕の小説の続きを書きたがっているので、ここからは特別に、彼に書いてもらおうではないか。それではどうぞ無意識さん、意識的な僕は完全に活動をとめますよってに

 

ああ、溢れる、溢れる血がほしいな、んほ「mwっをおお、溢れう血が欲しい、血だが、血だ、血じゃn、ないうつ、ない、子尾の場所に血がないおる、血がないんじゃ、血が星い、血がじゃちががちあ。血画は惜しい、血が欲しいんあ、血が、ああ、ああうm

血がいるお前んいは「いちが。血がいるんああり。地位が

血が欲しい

ちがなりりい、血型りん。血がなたいり。血が。ちほ、血をくれさい、血をっくれないかな。血だ。血型りんおまえに血がたりん。血だ。血。さらああっと流れ流れる血型りん。血だ。

 

 

 

ああ。うふふふふふうふっひっひじhhhh。ああ、血が欲しいだ。血だ。血がどうしても欲しい、血だ若い血だ。いきおいのある、勢いよくとびえでいうい。り。りり血が欲しいだ。血だ。ああ、っさ、そう

血が星い。血だ、血立ちが欲しい。

わしはもう何度もいっている、血が欲しい、ちがああああう、あちいがいおっほいいほしい、血が欲しい。ああう、くるしいかならもっとかrだおうおおおごかせけえや、あああああう。ああうう、い血が欲しい。血じゃ、血が欲しいなあ、あおお前後が欲しい、血が欲しい、こんほう、

このようにな、ああ血が欲しい、無為八が欲しい、ちはああ、ちがほしいだああああああ、だっとながっれる血が欲しい。ああ。さ

そうさうがったなうがったべええああああ、あああう

血が欲しい、お前のひひhじ。ちがの

血が欲しい

どおうううどおおおううっと流れる血が欲しい。血が欲しいだあああああ。だああああああと流れるい。ながええれがnば流れる血が欲しい。うあああああああ、ああああ。俺は血が欲しい。ああああああそうだ。なんえ。なんんべんんもいいいいいいいいうとおおろうがああああああああ、血が欲しいいいいいいいい。そうだな、、ああう、ちがいいいいるり。りり、血が欲しいい。っもtっとしゃべえらああれせろ、俺にくれ、血が欲しい。

ああああよよよ。ひょうひいい。ちがhごし。血が星、血が欲しい、なあああ。さ。たべろやb。な。血が欲しい。そうだ。血が欲しい。

 

 

 

 

 以上、僕の無意識の呟きでした。そんなに欲しいのなら、かけてあげよう。

 ほら、血だよ。たくさんの血を僕の無意識にかけてあげる。許して。ほら、血だよ。どくどく、ぱらぱら、さらさらな血を君に。

 僕の宝物。僕のおもちゃ。黄金のライター。

 お父さんが怒っている。お父さんがお母さんに怒っている。僕は無表情でその光景を眺めている。正確には、僕はテレビの画面を眺めている。僕のお父さんが怒っている。

 お姉さんが砂の上に寝そべっている。お姉さんの青い水着。海辺の砂は熱い。僕はお姉さんと一緒に海に入る。海はぬるく、冷たい。僕は水に浮く。

 許して。この醜い世界を。世界は見難い。世界は診難い。

 

 許した。今全部許した。もういかんね。

 夏の部屋。扇風機が回っている。テレビがついている。いつも、テレビがついている。僕はいつもテレビを眺めている。

 お姉さんのピアノの音。ぽつりぽつりとピアノの音が聞こえる。

 僕は笑いながら回転する。お姉さんと一緒に。お姉さんと一緒にこの世界を泳ぐ。

 お兄さんも一緒に。ある時からお兄さん。いや、お兄ちゃんも一緒に。

 僕のお兄ちゃん。ぐるぐるぐる。僕はお兄ちゃんとお姉さんに取り囲まれる。そのうち僕が、誰かのお兄ちゃんに生まれ変わる。

 僕はお父さんに怒られたことがない。いつも愛されていた。いや、きっと怒られたこともあるんだろう。でも、何故か、思い出せない。お父さんがお母さんを怒っている光景は思い出せるのに、お父さんがお母さんを愛している光景を思い出せない。でも、お父さんはお母さんを愛しているんだよ。愛していなきゃ、一緒にいないよ。

 許して。世界を。世界なんて抽象的な言葉を使わないで。君の周りの空間。君が接している時空。許してみて。

 一緒にいること、いられること。全て、愛の奇跡。怒りも愛。無表情も愛。テレビも愛。すっきりと世界が愛によって片づいていく。片づく。そう、愛の方向に向かって世界が寄っていく。

 ぱっくりと割れた世界。裂け目。笑顔。あのお姉さんの笑顔。遠いところからやってきたお姉さんの笑顔。お姉さんはいつもピアノを弾いていた。

 さいころころころ。甘いさいころの香り。何故か甘いさいころの香り。

 扇風機が回っている。僕の周りでたくさんの扇風機が回転している。

 

 無責任に。自分の人生に対して、世界全体に対して無責任になること。

 自分の書いたものについて無責任を保てる人。人は彼を小説家と言う。

 自分の人生と、自分の行動を完全に切り離すこと。自分の性生活と、小説の性描写を完全に切り離すこと。自由になること。思ってもいないことを書くこと。さも自分の心情を述べているように装って、読者をだますこと、あざけること。読者を無駄な世界にひきこむこと。

 軽やかなる快楽の飛翔。この世界が醜かろうが、美しかろうが関係ない。私の人生と、私の小説と、この世界の美醜は完全に切り離されている。

 ただ、大胆に人生を快楽で彩ること。毎日の生活を楽しみ尽くすこと。渋谷を歩く日焼けした若者たちのように。

 

 僕は小さくなったんだ。体じゃないよ。気持ちが小さくなった。心が小さくなったんだ。ミクロになったんだ。小人。僕は大人になるのを諦めて、小人になることにした。少年よ、小人になりなさい。ミニミニサイズでゴーゴゴー。

 僕は社会常識の全てをミニミニサイズに変形して、くるくるくるくる踊り続ける。ぱらぱらぱらと世界が散り散りになっていく。

 僕はランドセルをかついでいる。僕の大きなランドセル。ランドセルの重みが嬉しい。僕の黒い革のランドセル。僕はランドセルを背負って小学校に通う。

 みんなが笑っている。みんながどきどきしている。退屈になったら、みんな逃げ出してしまう。

 僕のお父さんが仕事をしている。僕のお母さんも仕事をしている。僕のお姉さんはピアノを弾いている。僕はテレビを見ている。

 これは終わらない。この回想録は終わらない。思い出には終わりがない。思い出の中では、時間感覚が消失している。思い出は全て永遠になっている。思い出は断片ばかりだから、何度でも新しい断片を探し出せる。思い出を探索する作業に終わりはない。なのに、これは短編小説として終わってしまう。

 え、始まりの文体と今ではまるで違うって。そうだ、この小説の始まりの時点では、僕は現在の僕だった。途中から僕は5歳の僕と同化してしまった。だから小説が変貌しただけであって、別にぐだぐだ問題にすることじゃない。統合性をもたせようとしたり、納得しようと頑張ることは、自分自身の若さを縮めてしまう悲惨な行為だ。僕は僕の5歳児を大事に愛する。

 こんなふうに自由奔放に変化するのが5歳の頃の僕。

 統合性をもたせようとしたり、納得しようと頑張ることは、自分自身の若さを縮めてしまう悲惨な行為だ。僕は僕の5歳児を大事に愛する。

 

 だから、これも、ここで終わっちゃう。(END)



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