ベリー二『人生は、奇跡の詩』
最終更新日:2008年2月21日
「ライフ・イズ・ビューティフル」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したイタリアの映画人ベニーニが監督・脚本・主演した社会派恋愛コメディーです。「ライフ・イズ・ビューティフル」同様今回の主役も3枚目のコメディータッチなイタリア男。前作ではユダヤ人強制収容所の悲劇を前に、子どもと父親の愛情が描かれましたが、当作ではイラク戦争中のバグダッドで、男女の愛が描かれます。
主人公の詩人アッティリオは、ヴィットリアという女性が大好きで、それこそストーカー的に追い回すのですが、ヴィットリアはいつもはぐらかし。ただの陽気なストーカーじゃないかと思っていたのですが、バグダッドでヴィットリアがアメリカ・イギリス軍の最初の爆撃で負傷してから、アッティリオのストーカー的愛情の強さがプラスに作用し始めます。
薬もない負傷者だらけのバヅダッド、誰もがもう無理だ、後は死を待つしかないと諦める中、アッティリオだけは、ヴィットリアは絶対助かると行動し続けます。脳腫瘍で意識がなくなったヴィットリアに向けて、アッティリオはいつも通り愛情溢れる言葉をかけ続けます。最初はこのストーカー、と思っていたのですが、医者からも見放されたヴィットリアに話しかけ続ける陽気な詩人の姿を見ていたら、人を愛するということは、これほどの力を持つものなのかと涙が出てきました。
イラク戦争の主題が前面に出ることはありません。映画はチャップリン的味つけを持つ極上の恋愛コメディーです。監督は映画と恋愛映画が好きなんだなとよくわかります。
恋愛映画は毎日山ほど創られているけれど、それでも自分が創るとしたら、どういう新しい意義を映画に与えるのか。それには現代性を取り入れればいい。かつてはなかった、時代がもたらした、ちょっとした現代性を映画の中に取り入れれば、今まであった恋愛映画の素晴らしさを活かしつつ、新しい映画を創ることができる。極めてオーソドックスな創作の手法ですが、映画作家を目指す若い人たちにぜひ観て欲しい映画です。
(このレビューは2008年1月27日にブログに発表した文章を転記しています)
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