ランドール『ワープする宇宙』
最終更新日:2008年2月21日
発表当時から気になっていたが、もっと早く読んでおけばよかった。派手なピンクのデザインなので、読んでいる最中は、「昼休みに分厚いエロ小説を読んでいる」という誤解を受けたりもした。表紙に映る著者は美しいし、学究派美女の物理学者によって書かれていると想うと、読むのも楽しくなってくる。
テーマは現代物理学の最先端、余剰次元理論の紹介である。我々の世界に4次元以上の次元が接していること、宇宙が一つではないことは、受験教育では教えられていないけれど、現代物理論の世界では常識となりつつある。私たちが住むというか閉じ込められている4次元時空の上には第5次元が広がっている。
ひも理論では、超高次元は極度に小さく丸めこまれているため、私たちが知覚することはできないのだと解釈した。著者がもたらした新しい視点は何か。著者は第5の次元は無限に広く、ワープ(曲がる、歪む)している宇宙だという。なぜ第5次元が歪曲する必要があるのか。歪曲している広大な第5次元を想定することで、重力と他の3つの力を統一して解釈できるからである。
物理学者は何故複数の次元があると考え出したのか。奇想天外の変態天才集団だからではない。重力、電磁力、強い核力、弱い核力の4つを統一的に、矛盾なく説明する理論を打ち立てるにはどうすればいいのか、彼らはそういう細かいことを50年以上考え続けてきた。その果てに常識では考えられない並行宇宙論が生まれてきただけだ。
別の宇宙という考え方は、プラトンのイデア論やカントのモノ自体の世界を想起させる。アリストテレスから派生し、デカルト、ニュートンと続いた合理的世界観は、現代にきてプラトン流のイデア論に舞い戻る。すなわち、私たちにははかりしれない別の世界がどこかにあるのだ。
人類はどこまでも果てしない世界について知ろうとする。人類史とは神の心を読む旅路だ。
(このレビューは2007年12月4日にブログに発表した文章を転記しています)
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