佐々木力『数学史入門―微分積分学の成立』
最終更新日:2008年2月21日
高校で必死に勉強した微分積分なんて、大学に受かってからは一回も使っていない。社会に出てからも一回も使っていない。あんなものを習って意味があるのかという疑問には、強い反論を浴びせることができる。
第一に、微分積分の知識を利用して社会貢献する高度専門職にふさわしい教育を受けていながら、学校時代の知的財産を全く利用しないですむ職業に就く人が多いのは社会問題だ。第二に、微分積分は近代文明発展の原動力と言えるほど、人類史の鍵なのだから、人類の知的財産を学べることには、深い意義がある。第三に、暗記でも微分積分をこなす計算力、推論力を磨くと、思考能力が養成される。
微分積分の計算は定式化されているから、暗記すれば誰でも練習問題をこなせるのだけれど、微分積分の本意は、その理論的発見にある。無限に小さい数を解析することによって、人類は文明をおおいに発展させた。この本では、人類がいかに無限に小さな数を解析する能力を発展させていったかの歴史を学べる。
ニュートンは幾何学的方法を使って、ライプニッツは代数的方法を使って微分積分を定式化した。カントやヘーゲルは、ギリシア・ローマ時代程度の数学知識しかなかったけれど、デカルトやライプニッツは当時の哲学の最前線にあると同時に、数学においても知の最前線に立っていたことがよくわかった。
数学史を学べば学ぶほど、ライプニッツという哲学者の異質性、先進性が心に刻まれてくる。
(このレビューは2007年11月8日にブログに発表した文章を転記しています)
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