書評:フランソワ・ジュレ『地図で読む現代戦争事典』
最終更新日:2008年2月11日
(以下の書評は2007年12月10日にブログにて発表済です)
軍事系の本のようなタイトルだが、フランス語の原題はより哲学的。フランスの地政学者による現代世界史をまとめた良書である。
おおまかに言うと、第一次世界大戦は、帝国国家から独立して民主主義の理念を実現しようとした民族、及び彼らを援助した民主主義国家と、ドイツ・オーストリア等帝国主義国家との戦争となり、民主主義側が勝利した。
第二次世界大戦は、独裁・全体主義国家と民主主義国家の対決となり、民主主義側が勝利した。
フランス革命後の世界は、民主主義とそれに連なっている市場経済を擁護する派と、反対する派で争ってきた。
大戦後、民主主義と共産主義がにらみ合う形になった。ヨーロッパ、USA、日本など世界大戦に参加した国は、50年以上に渡る、ありえないほどの平和を手にした。しかし、豊かに発展するそれらの国以外の地域では、小さな地域紛争、民族紛争、宗教戦争が続発しており、永遠に戦争が続くかにみえる。
戦後日本で暮らしていると、20世紀は凶悪な戦争の世紀だったなんて信じられないけれど、民主主義の庇護にない国々では、泥沼の紛争が続いていたのだ。
一方民主主義の国では平和を補完するように、未成年の少年が片思いの相手を殺したり、30代の大人が小学校に乱入して無差別殺人を行ったり、心の病、神経症、肩こり、ヘルニア、眼精疲労が広がっている。21世紀は石油と水という生活資源をめぐる世紀になるのだろうか。
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