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福田誠治『競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功』

最終更新日:2008年2月11日

(以下の書評は2007年7月21日にブログにて発表済です)




ゆとり教育導入で学力が落ちたことから、日本の教育は旧式な競争学習に戻りつつある。しかし、競争を推進しない、個人の自発性と能力開花を重視する教育を進めたことで、学力の国際テスト及び経済発展で優位にたった国がある。フィンランドは競争的教育手法をやめて学力世界一になったのに、何故日本は競争をやめたら学力が下がったのか。

著者は現在の日本の教育のままでは、日本の国力がますます下がることを危惧している。いわく、日本の学力がアメリカ並みに下がる。なんだか日本はアメリカ型の社会を目標として活動しているようだけれど、アメリカの学力の方が日本より低い。アメリカは自国の学力の低さを、世界中の優秀な学生を集めることで、企業でも働いてもらうことで、補っている。このままいったら、日本でも多くの人がおばかになって、外国から優秀な人材を招き入れないと経済が成り立たなくなるという不安論。

一方フィンランドの生徒はおおらかでたくましい。どんなにすごい教育をやってるのかと思って学校に行くと、生徒は好き勝手なことをしている。授業中編み物をしている生徒が多くて、著者はびっくりしたのだが、授業に集中できない子は、編み物など集中力を養う作業をやってもいいのだそうだ。

平均点のいい学校に行った方がいいんじゃないの?とフィンランド人に著者は何度も質問するが、成績のいい学校に入っても、いい成績をとれるかどうかは自分次第じゃないのといつも決まった回答が返ってきて、かつ呆れられるという。学力の低い学校に入っても同じ理屈。周囲の能力など関係なく、人生の全ては自分次第という自己本位の哲学が浸透しているからこそ、たくましくなるようだ。

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