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爆笑問題のニッポンの教養「平和は闘いだ」平和構築学者 伊勢崎賢治

最終更新日:2008年2月22日
(ブログ記事掲載日:2008年1月19日)

NHKの番組「爆笑問題のニッポンの教養」は、お笑い芸人コンビの爆笑問題が、日本人の学者にインタビューする番組です。今週放送分のテーマは「平和は闘いだ」。東京外国語大学で平和構築学を教えている伊勢崎賢治氏がゲストでした。

伊勢崎氏は実践的活動家として、国連の平和維持活動に貢献しています。ソマリア、アフガニスタンなど国際ニュースで飛び交う内戦激戦区に足を運び、国連の代表として、和平調停交渉に臨んでいます。対立する双方の意見を組み、中立な国連軍の武力をバックに交渉を進め、双方の利害を調整した上で、武装解除を成功させているのです。

印象的だったのは、平和はセクシーにならなければいけないと言っていたことでした。人道活動をしている人たちにとって、アメリカのアフガニスタン、イラク攻撃は重い内容だったそうです。なぜなら、アメリカ政府は人道、平和を守るためにテロと戦うといって、戦争を開始したからです。一見するとアメリカ政府は平和主義者、世界平和の味方なのですが、結果として多くの市民が殺され、監禁、拷問事件まで起きている。テロとの戦いというスローガンを前にしては、平和活動家は自分たちの活動について反省せざるをえませんとおっしゃっていました。

また、戦争を始める側は、広告の技術などを駆使して、実に戦争を魅力的に、セクシーに描き、市民を興奮させます。彼らは実にセクシーなのですが、平和には、戦争を開始する時ほどの魅力も、セクシーさもないのではないか、自分たちはもっとセクシーにならなければ、向こうの勢力に負けるのではないかとおっしゃっていました。

この発言に対して爆笑問題の太田氏は、平和はそんな魅力的なものじゃないんだ、攻撃、戦争の方が魅力的なのは当たり前だ、平和をセクシーにしてしまったら逆にやばいんじゃないかと反論していました。伊勢崎氏は確かにそうかもしれないが、このままでは向こうの勢力に負けてしまう、平和支持者はもっとセクシーになって、活発にアピールしないといけないと言っていました。

グローバリゼーション、新自由主義、国際競争、貧困、飢餓、環境破壊、生態系の破壊は日増しに進んでいます。こうした進展を前にして、平和を愛する人たちは、平和の魅力を前面に打ち出した、アピール活動をする必要があるでしょう。芸術も役立ちますし、言葉の魅力、映像の魅力、あらゆる手段を使って、破壊を推進する勢力よりももっと狡猾に、魅惑的に、アピールしていく必要があります。

平和は戦って守るものだという言葉には明らかな矛盾がありますが、現実は平和に大して悲惨な方向に進んでいます。伊勢崎氏はイラク戦争後のアメリカの反省、立ち直り方を評価していました。アメリカはあの戦争を批判し、新しい道を模索し始めていますが、世界がむしろ追いついていないのではないか。特に日本!


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