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ムシャラフ、ガンジー、民主主義、「先進」的のあるべき未来形

最終更新日:2008年2月3日
(ブログ記事掲載日:2008年1月6日)
昨日NHKで民主主義についてのドキュメンタリー番組が放送された。かつて衛星第一放送で放送されたものの再放送だ。パキスタンのムシャラフ政権のドキュメンタリーと、現在インドでガンジーがどのように受容されているかのドキュメント。パキスタンをテーマにしたものは、放送当時、気にもとめなかったけれど、ブット元首相暗殺後だと、番組の意味合いが全然違ってくる。

番組は進歩的ムスリムの女性監督によって撮影されている。ムシャラフ大統領へのインタビューもおさめられている。ムシャラフは軍事政権である。軍人でありながら民主主義の大切さを主張するムシャラフ大統領は、イスラム過激派からは親米派としていとまれているが、パキスタンの進歩派からはイスラム過激派に親睦過ぎる軍事政権として批判されている。右と左両方からうとまれる民主主義的軍事政権とはどのようなものか、ドキュメンタリー番組は迫っている。

ムシャラフの立場はデリケートなものだ。番組でのインタビューを見ていたら、ブット元首相は政府の手によって暗殺されたというゴシップはゴシップにすぎないのではないかと思えてきたが、真相は定かでない。軍事政権が何故民主主義の尊さを叫ぶのか、一見奇妙に見えるが、アメリカは他の「途上国」においても新米軍事独裁政権を作り出し、アメリカ支配を広めていった確信犯だ。何につけてもパキスタンが今後どうなるか気になる。

インドのドキュメント番組も印象深かった。ガンジーの非暴力の思想は、現代インドでは撃ち棄てられている。人々は競争し、宗教対立も根深く残っている。「最大多数の最大幸福はあやまりだ、全員の幸福、これ以外に目標はない」というガンジーの言葉が印象深かった。

自分は今後どうしていくかについて、大きな示唆も得た。ドキュメンタリー映画の監督になったつもりで、日常を記録していこうと思う。文学に残された可能性。暴力が増大する世界の記録。

全員の幸福を目指す社会。しかし、人類の人口爆発はとどまることを知らない。他の生物は生存競争にさらされているから、食ったり、食われたりしている。人類だけは生存競争にさらされていない。本当にそうだろうか? 文化や経済の生存競争は自然の生存競争よりも時として過酷になる。敗者は徹底的に痛めつけられる。飢餓や貧困は生存競争の結果として弱者に押しつけられる。増えすぎた人口を戦争以外で抑制するために、飢餓や貧困が広がる。人類がこれ以上増えても、地球は人類を養えないのだから、人々は自然と減っていく道を選択している。しかし、文化的生存競争の敗者になっている人々は、競争の結果敗者になっているわけではない。生まれながらにして、彼らは人類文化の負の部分を押しつけられた。先進国は富み、「途上国」は貧困と飢餓にあえいでいる。この不公平なバランス。

日本のCO2排出量は高い。日本はまだまだ消費している。アメリカや日本の国力が衰えていくのは、地球環境にとっては望ましいことだ。日本式の、アメリカ式の生活モデルは人類が目指すべき目標ではない。自然と衰弱していく国家。再び繁栄を目指すことは愚かだ。地球人類の誰もが幸福になれる生活モデルを模索すること、指し示すこと。こういった探索を続ける国、人々こそ「先進」的と呼ばれるべきだろう。
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